2012年より広島カープ1軍内野守備・走塁コーチに就任し、コーチング業に就いた石井琢朗。
ここから常に1軍コーチとして奮闘し1塁コーチャー3塁コーチャーと活躍。
そして広島カープが25年ぶりの優勝を飾った2016年。
実はこの年から石井琢朗は1軍打撃コーチへと就任していました。
広島打線は石井コーチの指導から打撃開眼し爆発的な得点力を発揮しました。
石井コーチのどのような教えがここまで打線を変えたのでしょう?
目次
7割の失敗を活かせ!意識改革!
いざ聞いてみたら納得してしまう野球の打者としての7割の失敗。
通常打者は3割打てば一流と言われています。
一流の打者でも7割は失敗。この失敗をどう活かすか。
この失敗の活かし方をカープで説いてきたのが石井コーチです。
とにかく意識の改革。
どんな選手でもチャンスの場面ではランナーを還したいに決まってる。
ここに我々コーチ陣があれこれ技術的な指導をしても、どうしてもチャンスでアガってしまう選手はいる。ここは技術ではカバーできない。
だから意識改革。
アウトカウント、ストライクカウント状況、ランナー状況、1つ1つの場面を想定し、徹底的に意識を変えていくことで体が目標に向かい全力を出せる。
この考え方がカープでは革命を起こしたキッカケとなりました。
東出、迎1軍打撃コーチにも評価の指針を共有することを求めた
石井コーチは例え凡打でも内容のある凡打は評価するよう東出、迎打撃コーチに求めました。
3人の打撃コーチが意味のある凡打を評価するという図式を作ったのです。
進塁打、内野ゴロ間の得点など、たとえそれが併殺打であろうと得点や進塁打に結び付く打撃をしたならベンチから大声で「ナイスバッティング」と叫びました。
これが選手間にも伝染しチーム全体で内容のある凡打で盛り上がるようになりました。
やってる事がどれほど難しいと言うと、凡打を評価するという事をプロ野球でやってるということが凄いことなんです。
送りバントを成功をさせてベンチ前でハイタッチする姿は近年よく見かけるようになりましたが、
これは選手が1つ成績として残るという点でも評価できるし、チームの役割を全うしたという点でも評価できます。
しかし凡打というのは個人の成績としてはほとんどがマイナスイメージというのはプロの世界ではあることでしょう。
自分の残した成績で給料が変わるんだから、なかなかチームバッティングに徹するのは難しいことだと思います。
ましてや狙ってアウトでいいから凡打や進塁打を打とうという意識を持つことは怖いことだと思います。
しかしそれをチーム全体として、みんな同じ意識を持ったらどうか。
この考え方を選手全体が理解し実行することはとても難しいことだと思いますが、
石井コーチの7割の失敗をどう活かすか?はカープ全員に浸透しました。
選手がみな平等という意識を持つことで安心して凡打を打てるようにしたというのが大きなポイントでした。
この意識改革はベテラン新井にも
石井コーチがシーズン中、ベテラン新井選手に感謝した事があります。
それは2016年8月7日の巨人戦。
この試合新井選手は1塁への全力疾走をしっかりやったことで2度得点に繋げられたシーンがありました。
3対5のビハインドで迎えた5回裏。1アウト2、3塁でセカンドゴロながら3塁走者が還り1点追加。
5対7で迎えた7回裏には1アウト1、3塁でゲッツー崩れの間に3塁走者が還って1点追加。
全力で走った結果セーフとなり相手を追い詰める貴重な追加点をあげたことを石井コーチは褒めました。
ベテランに僕の考えをやってもらって感謝。ベテランがやることで若い選手は見習う。
特に2000本を放ち、実力もある新井選手なら三振しても誰も文句は言わない。
けれどそんな場面で、凡打でしっかりと全力疾走。
これは正直力を抜きたいレベルにあると思われる新井選手が、1塁への全力疾走をきっちりやったことで団結心が深まった形でした。
石井コーチの練習メニューは鬼?
石井コーチの練習メニューはとにかく振る!素振り!です。
なんと2015年秋季キャンプでは1日800スイングなど相当な振り込みを選手に要求しました。
これは凡打をなくすところへ繋がってくる三振数を減らす目的で取り入れました。
まず練習で100点を出すところから始めようと改革を進めました。
練習で100点出せないレベルでは試合では100点(3割)は出ない。
試合は試し合いと書いて試合なんだから、練習で90点なら2割7分の実力しか試せない。
3割出せる実力で試しにいくんだから意味がある。それが1軍レベル。
石井コーチの筋の通った教えには選手もついていきたいと思ったことだと思います。
2015年と比較する2016年2017年のカープ打撃成績
石井コーチが打撃コーチとして就任したのは2016年。
ただ2015年秋季キャンプより打撃コーチとしては始動。上記の通りです。
カープを2016年25年ぶりリーグ優勝に導いた緒方監督も素晴らしい采配でしたが、
石井コーチが就任してからのカープの打撃成績はどうだったでしょう。
打率 | 得点 | 安打 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 | |
2015年 | .246 | 506 | 1170 | 105 | 473 | 80 |
2016年 | .272 | 684 | 1338 | 153 | 649 | 118 |
2017年 | .273 | 736 | 1329 | 152 | 705 | 112 |
表を見てもらえば分かるように2016年からの打率、得点、安打数、本塁打数、打点数、盗塁数どの数字もとんでもないレベルで向上しています。
正直、これだけ変わるのか?
と疑いたくなるほど素晴らしい打撃成績を納めています。
特に得点数では2位チームと100点以上離すなど抜群の得点力が見て取れます。
こんな打撃コーチがなんと2017年限りで広島カープを去ってしまいます。
守備走塁コーチとして共に活躍した河田コーチと共に東京へ帰郷するようです。
大変ショッキングなニュースですが、なんでも家族との時間を犠牲にするのも限界らしいです。
自宅のある東京から通うことのできる球団へ移籍することが濃厚です。
カープ以外でも石井コーチの教えは浸透するのか
石井琢朗は横浜DeNAを戦力外となり現役を強く希望し2009年39歳の時に広島カープへ移籍しました。
かれこれもう8年もカープで頑張ってこられたわけですからファンとしては寂しいですが、
今はお疲れ様でした、カープを優勝に導いてくれてありがとうございましたと言いたいです。
家族と過ごす時間を優先し、2018年からは他球団でコーチを務めることが濃厚な石井コーチ。
現在東京ヤクルトがコーチ招聘検討中のようですが果たして他球団でも打撃改革、意識改革を実現することはできるのでしょうか?
個人的なスキルに関しては全く問題ないことをカープで証明しています。
むしろ25年ぶりのリーグ優勝へ導いた手腕を欲しいという球団は多いと思います。
ただ、個人的には他球団での打撃力向上はそう簡単にはいかないのでは?と思います。
カープは育成球団として有名な球団ですからコーチが指導し選手を伸ばしていくことが自然な球団です。
FA選手獲得もしたことのないくらいの球団です。
言い方は悪いですがプライドの高い選手がそれほど多くない球団だったからこそ、石井コーチの7割の失敗も選手に成長に結びついたと思っています。
これが巨人やソフトバンクなどFA選手獲得が多い球団に移籍したとなると、線の指導でなく点での指導になってしまうのではと思います。
石井コーチはカープの選手全員にチーム打撃、1塁への全力疾走を叩き込んできましたが、
最近ではヤクルトのバレンティン選手、中日のゲレーロ選手、ビシエド選手など、凡打を放つと1塁はアウトと決めつけてたらたら走る選手を多々見かけます。
こういう選手のいるチームの意識を変えることは並み大抵のことではいかないと思います。
ただ、それを含めて移籍チームでの石井コーチの活躍が楽しみでもあります。
ファンとして石井コーチのいるチームの打撃や走塁は大注目して見ていきたいと思ってます。